わたしが生きたい社会ってどんなだろう?
そのヒントは、北欧にあるかもしれない。

わたしたちが北欧で見たこと、感じたこと、そして、語りたいこと。
大学生たちが現地よりお届けします。

デンマークのトランプ?ラスムス・パラダンは国政進出しうるのか?

デンマークの国政選挙の投票日が明日に迫っています。
私はフォルケホイスコーレに留学しているのですが、全寮制なのでデンマーク人の友達はみんなすでに投票に行ったようで、結果を待つばかりといった様子です。(EUの選挙が先日あったので同日に期日前で投票していました。)

先日、友達(デンマーク人)が部屋でyoutubeの政治家のスピーチを見ながら涙を流していました。何の動画を見ていたからというと「Rasmus Paludan(ラスムス・パルダン)」という政治家の政治パフォーマンスの動画でした。


ちなみに、私は、高校をドロップアウトしたと言ってた子が部屋で政治家のYouTubeを観ていることも、それなりに衝撃でしたし、政治家の動画で泣く18歳が存在することに逆に涙が出そうでした。

なぜ彼女が泣いていたのか?

その理由は、感動ではなく、怒りや悔しさでした。
ラスムス・パルダンは、Youtuberであり、弁護士なのですが、この国政選挙にHard Lineという新党を設立して出馬していて過激な反ムスリム思想で議論を呼んでいます。

「デンマークのドナルド・トランプだよ」「どっちかというとナチに近いかな」とデンマーク人の友達に説明されました。レイシズム的なところがナチと通ずるということだと思います。今のところ、ドナルド・トランプほどの影響力は持っていません。



彼は演説や集会の際にパフォーマンスとして、言葉で挑発したり、コーランを燃やす、踏みつける、投げるなどしてイスラム教徒を冒涜しています。このパフォーマンスはデンマークの移民が多い、つまりイスラム教徒が多い地区でも行われています。これに反応して一般の人々が投石や火炎瓶による破壊行為を含む暴動を起こして、約20人が逮捕される事態が起きています。



彼のパフォーマンスを観て泣いていた私の友達は

「同じ人間なのにどうしてこんなことができるのか信じられない」

「彼が議席を取るかもしれないなんて許せない」

「人権侵害も甚だしいパフォーマンスをしている彼が、どうして警察官に守られているの??」と嘆いていました。

実施の様子↓


この動画の舞台である移民などマイノリティが多い地域Nørrebroについては以前ライターのなおが書いた記事をこのブログでも取り上げています。おもしろかったです。興味がある方は読んでください!→こちら

ラスムス・パルダンのヘイトスピーチ、パフォーマンス

彼について分かりやすくまとめられている記事を紹介してもらったので、これを翻訳しながら、もう少し詳しくラスムス・パルダンについて書きたいと思います。私はこれを読んでかなり不快に思ったので、読みたくない人は別の記事に移動してください。
(オススメはこの国政選挙について分かりやすくまとめられているこちら

ラスムス・パルダンとは?

彼は、PRで以下のスローガンを掲げています。
"I am the Soldier of Freedom, Protector of The Weak, Guardian of Society, Light of the Danes." 
「私は、自由のための兵士、弱者の守護者、社会の守護者、デンマーク人の光である。」 

 彼の政党 Hard Line (Stram Kurs)の主張とは?

デンマークはデンマーク人のための国でなければならない。デンマーク人とは、出生時に民族的デンマーク人だった人、または乳児として養子になった人だ。デンマーク人だけがデンマークに住めるはずだ。
イスラム教はデンマークで禁止されなければならない。 
デンマークは、デンマーク国民ではない非西欧人を追放しなければならない。観光客や熟練した労働者を除けば、デンマークに一時的に滞在することを禁止するべきだ。
デンマークは難民を統制する国際条約から離脱しなければならない。
海外にバックグランドを持つデンマーク在住の著名人(例えば政治活動家、宗教スポークスパーソン、犯罪者などで、その多くはデンマークの市民権を持っている)の名前のリストをポスターで掲示する。「彼らを追放しなければならないー必要ならパラシュートを使ってでもー」というタイトルをつけて。

ラスムス・パルダンのヘイトスピーチ 

  • 社会住宅(公営住宅など)の住民を「人間のゴミ」と「犯罪者」と言う。
  • しばしば特定の国や人口のIQが低いと主張。中東およびアフリカを指して「低IQ国」および「IQ-70諸国」という
  • コーランを燃やす、投げる、蹴る
  • コーランのページの間にブタの耳を入れる
これまでのところ、警察はデンマーク内での彼のデモなどの活動を保護するために1億円以上を費やしているそうです。(2019年5月現在)
最近、彼はある地域での「デモ」の許可を否定され、言論の自由に反すると抗議しているようですが、実際、多くの場所で彼の政治パフォーマンスは許可されてこのようなヘイトスピーチが行われているようです。

ラスムス・パラダンは国政進出するのか?

ヘイトスピーチを繰り返すパラダンは、反移民・反ムスリムの議論がデンマークで高まりつつある社会状況から登場してきました。実際に今回の選挙では、右派・左派どちらが政権を獲得しても、移民への強硬な姿勢が強まるものと予想されています。
また表現の自由が非常に尊重されているデンマークだからこそ、彼のような過激な発言や行動の存在が許されてしまっているとも言えます。

しかし、私のデンマーク人の友達と話していると、みんな彼を嫌っています。私の普段の生活では、彼を支持するような人には会いません。
だから、こんなヘイトスピーチをしている人が一部に支持されていて、議席を得ることがあるかもしれないなんて信じられません。

また、すでに彼は人種差別で有罪判決を受けています。

それでも、今の世論調査によると、1.2%~3.1%と揺れがあるもののそれだけの支持を得ています。議席獲得に必要な最低パーセンテージは2%なので、十分当選の可能性があるということです。

彼の政党Hard Line (P)は、今のところ小さなグループなので巨大勢力という訳ではないでしょう。それでも、ヘイトスピーチを繰り返す彼が民意が反映される民主主義の仕組みによって国会に送り出されるかどうかは大きな問題です。この問題に注目して、明日の選挙結果を見たいと思います。

ラスムス・パルダンについて短く紹介されているで、こちらの動画も載せておきます。





この記事を書いた人
能條 桃子 
慶應義塾大学経済学部休学中。
大学では井手英策研究会に所属し、財政社会学を学んでいる。
関心テーマは、若者の政治参加、多世代交流、リカレント教育、女性の社会進出や都市化と家族・地域のカタチなど。
NO YOUTH NO JAPANという団体をやっています。

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