わたしが生きたい社会ってどんなだろう?
そのヒントは、北欧にあるかもしれない。

わたしたちが北欧で見たこと、感じたこと、そして、語りたいこと。
大学生たちが現地よりお届けします。

【マティアスくんインタビュー後記】民主主義をわたしたちのものにするのは誰なのか?

インタビュー後記、始めます。

Mathiasくんとメンバー(インタビュー時の様子)
「わたしたちの北欧がたり。」第1回目のインタビュー記事を公開して1週間、多くの方に記事を読んでいただき嬉しく思っています。
Mathiasくんインタビュー記事本編はこちら

このインタビュー後記では、インタビューをさせて頂いた後、わたしたちがインタビューを通じてどう感じたかを、Mathiasくんに触発されたテンションで語っています。

「わたしたちの北欧がたり。」とは、北欧を礼賛して終わるのではなく、その後自分たちはそれに対しどう考えるのか、活かせるかを議論し、語り合う場としてあります。もちろんすぐに実現するのは難しいでしょう。だけど、それを考える余白をつくりたいと思い、第一回のインタビュー後記を公開します。
皆さんも記事を通じて感じたことなど共有してくだされば嬉しいです!



座談会メンバー

(メンバー:黒住 奈生、能條 桃子、瀧澤 千花、高槻 祐圭/実施日:2019年5月18日/編集:能條 桃子)

Mathiasくんがめちゃくちゃ素敵な好青年だった!!!

お疲れ様でした〜!!!
楽しかったね、初回インタビュー。
まず、Mathiasくんについてはどうでした?
Mathiasくん好青年だったね!
違う政党の人たちを全然敵視してなかったのがすごく印象的だったな。日本では他の政党、特に与党対野党ってなると、すごく敵対しているイメージがあるから。Mathias君は、他の政党の政治家や支持者のことも同じ社会を作る一員として尊重しているように見えて、寛容だと思ったし、人として素敵だなと思った。
自分の政治活動の話をしてくれているときに、「みんなを幸せにしたい」「みんなfamilyみたいに思っている」って言葉があったけど、自然とそういう言葉が出てくるのは素敵だなと思ったし、デンマークっぽいっていうのも思ったかな。
Mathiasくんが社会をもっと個人主義じゃなくて支え合う社会にしたいっていたのは、やっぱり彼のお母さんが社会でまかなう税金によって助かっていて自分がいるという原体験に基づいているものだったからこそ、想いが強いのかなと思った。
みんながみんな成功する訳じゃないし、支援される側になりたくてなる人はいないんだから、サポートは絶対必要だ!」っていうのを、周りに説得しようという意志をすごい感じた。
私もそこが19歳だけど19歳じゃないなと思ったところかな。
「自分が特別になりたい」「成功したい」「自分さえ良ければいい」っていう感情ではなく、みんながそうなれる訳じゃないって踏まえているのは大人というか政治家だなと。
彼みたいな政治家がいたら、政治がもっと身近になる気がする。
「どうしてMathiasくんみたいな子がデンマークでは生まれるのか」って考えたときに、きっかけとしての学校教育(学校選挙)とその後成功体験を積めた政党の青年部があったという両方だろうね。

デンマークの高校生も政治に興味はない?だけど...

日本よりデンマークは政治に参加する機会は多そう。それでもやっぱり、Mathiasくんは特別なんだろうね。デンマークでも高校生が政治はつまらないと言っている、っていうのは意外だったかな。デンマーク人って政治の話よくするイメージだったから、高校生の時から政治のディスカッションとか好きなのかなと思っていた。
そうだね。でも、実は話している内容は政治に関わっていたり、デモに参加したり何かしらの形で積極的に関わっているっていうのは面白いよね。そこは日本との違いではあると思う。
社会への関心はきっと強いよね。環境とか福祉とか教育とか身近なトピックは高校生でもいっぱい持ってるってMathiasくんも言ってた。
それに対して、みんな意見を持っているよね。
だとしたら、「関心を持つか」「意見を持つか」っていうのはどこから来ているんだろうね?
「意見を持つ」というのは、このあいだ小学校行ったときに感じたけど、学校教育で育まれるのかなと思った。国民学校の教育は、自分の意見を言う、他人の意見を聞く、そしてそこからミックスして良い答えを導くっていうのがフレームで根付いているなと感じた。
いろいろな人の意見に触れて育っていくから、「自分もこっち寄りかな」とか気づきやすいし自分の意見も持ちやすいのかも。誰も何も言わない中でゼロから自分の意見を持つっていうのは難しいよね。
選挙に関しては親とか学校でも話すって言っていたし、社会について話す機会は多いのかな。

どうして民主主義の担い手を育む教育がこんなに違うのだろう?

これは、構造的な問題であって、日本の子ども・若者の素質ではないよね。
デンマークでは教育によって育まれてきたものであり、その環境があるということだと思うけど、どうして日本はそういう教育がないのかな?
今まで日本はそんなに必要ともしてきてなかったのかなとも思う。
今までボトムアップで変えたっていう経験もないし、方法もないよね?あるのかもしれないけど…思いつかないや。みんなを巻き込んで、ってあんまりない気がする。

どうしてデンマークは政治が身近なのだろう?

でも、歴史的にはそうでも、制度上は今は日本も民主主義の国な訳じゃない。
デンマークでは、どうして政治が自分たちのものっていう意識があるんだろう?
一つは、国民にとっての政治が選挙期間だけじゃない気がするんだけどどう?
そうだね。党員の人も選挙活動の時だけじゃなくて普段から意見を言い合って、必要があれば議員に会ったりするって言ってたし、普段から政治に関わっている気がする。選挙活動のためのメンバーじゃなくて、自分が参加して社会を変える感覚だろうね。
政治家が身近というのもそうだよね。日本だと上下関係を感じたり「先生」って呼んだりするけど、自分たちの意見を政治のレベルに持って行ってくれる人っていう認識だよね。
デンマークでは投票とか自分のインパクトを大切に考えているというのもあるし、それを感じられているというのもあると思う。日本はほとんどの期間自民党の一党でやっているけど、デンマークではコロコロ変わっている訳じゃない、変化があるからこそ影響力を持てるんだなと感じられるというか。
デンマークの投票率が90%近いのにEUの選挙はそんなに高くないのが、まさにそれを表しているよね。
(*)2019年5月EU選挙の投票率は60%弱で、これが歴史的に高いと報道されていました。

あとは参加のしやすさで言ったらトピックベースなのもあるよね。
学校選挙の話でもそうだったけど、トピックベースで政党を選ぶというのも日本との違いかなと思った。
プロセスとしてどうやって政党を選ぶか、日本だと明確化されてないし誰も教えてくれないけど、学校でこうやって習うんだって知って面白かったかな。
《学校選挙では...》
1st week 自分にとって何が大切なトピックなのかを知る
2nd week そのトピックに関してキャンペーンをする
3rd week 自分に合う政党を見つけて、投票する
という3ステップで選挙を学びます。
こういうのを習っているから選挙で選びやすいのかなとも思った。日本だと、どれが良いのか分からないし、だから投票に行かないって言う人もいるけど、こういうの習ってたらちょっと違うかも。
デンマーク人の友達に「こんなにたくさん政党があってどうやって決めるの?全てを比べるのは難しいよね?」って聞いたときに、関心あるテーマを選んでその意見が合う政党を選ぶように学校で習ったって言っていたのは学校選挙のことだったのかなって思った。 こういうプロセスを体験を持って学んでいるのは大切だなと思う。日本でも学校選挙みたいな取り組みあったりするけど、架空のマニフェストを元に比較したり議論したりするよね、比較優位で決めるというか。
そう考えると本では、自分にとって何が大事って考える機会ってあんまりないかもしれないね。

政治の話だけじゃなくて、デンマークの人たちって自分がどうしたいかとか自分の意見を大切にしていると思う。だから相手の意見も大事にできると思っているというか。
そうだね、「independence(独立)」の価値観がすごく重要なんだと思う。
自分の意見を大切にするからこそ他の人の意見も大切にしていて、「collectivity(集団主義)」でもあるよね。
日本だと、政党ってなんらかの利益団体とか集団を代表する気がする。支持基盤があって、それに合う政策を提供するみたいな。
だからそれに所属していないような人たちはどこを選んだら良いのか分からないのかも。

まとめ「Mathiasくんから学んだこと」

制度についてばっかり話してきたけど、Mathiasくんから学べることは何だろうね?
私が一番やっぱり刺さったのは「距離を置いているのは君たちだよ」って言葉かな。
政治に関心がない子っていうのは政治を知ろうとしてない子だって言ってたよね。
マティアスくんは自分からアクションを起こすことを大事にしているよね。その中で、自分の意見を持って話すことも政治だっていうのは、勇気をもらえたかも。どうしても政治って、物理的にも精神的にもハードルが高いなあと感じていたから。
今日本で、政治と若者の距離が離れているとは思うけど、政治家なのか若者なのかがこの距離を詰めるように働きかけなきゃいけない。そうだとしたら、この距離が政治が遠ざかっていることによるものだとしても、私たち若者が働きかける方を捨ててはいけないよね。
信頼できる野党がないって話、よくするじゃない。だけど、結局それをつくるのも私たちだって話だよね。
結局この制度を変えるのもわたしたちな訳で、若者や将来のことをもっと考えた政策をして欲しければ、わたしたちが動かないと変わらないということだね。
まとまったね。そういうことだと思う! ということで頑張っていきましょう!笑 第1回目のインタビュー後記、終わります!