スウェーデンは日本に比べて避妊法やコンドームの種類が豊富な上、学生は殆どの場合それらを無料で利用できます。それにもかかわらず、学生の街ルンドでは性病が流行っているという現状があります。
今回はこの問題に取り組んでいる学生団体、Projekt Sexについてお話しします。
目次
20世紀後半、性病の流行が問題視され始めました。それに対し、現地の病院はポスターを使って検査や予防を促したそうです。しかしその効果は一時的なもので、長期的な学生たちの健康のためには、性に対する正しい知識を身につける必要がありました。そのために活動を始めたのがP6です。
P6は身体的、精神的、社会的なレベルで性の健康を促進しているルンド大学の学生による、学生のための団体です!
様々なセクシュアリティへの理解を高める活動もしています。
私たちからするとコンドームは避妊具ではなく、あくまで性感染症の予防という認識。写真のようにSTI(性感染症)の検査ができる近くの病院をリストアップして紹介しています。
こちらの病院、なんと私たち留学生も無料です。さすがスウェーデン!
この検査で聞かれることはたった1つだそう。
「いつ頃から性病を疑い始めましたか?」
これを聞けば不安全な性行為を行った時期、ウイルスの潜伏期間が分かるということですね。的確で無駄がなく、相手を不快にさせないこの質問には感動しました。
だからこそP6に関わる方法は以下の3つ。
・メンバー member
イベントに参加したりニュースレターで情報を得る
・エデュケーター educator
2日間に及ぶレクチャーで得た知識をP6のアクティブメンバーとして広める
・オフィサー officer
エデュケーターの中から立候補し、性教育、LGBTQコミュニティーなどのイベントを幹部として運営する
ピアエデュケーションを大事にしている私たちは、イベント参加やニュースレター購読だけの人たちのことも大事なメンバーと見なしています。エデュケーターとオフィサーは「アクティブメンバー」と呼ばれており、受け身でもいられる「メンバー」と違って主体的にP6の一員として働くことが求められます。
私はエデュケーターとして活動していました。主にコンドームレイドをしたりイベントのお手伝いをしたり、オフィスに在籍したり、さりげなく友人に性の話題を振ってみたりしていました。
エデュケーターになるためのレクチャーでは主に(1)同意の大切さ、(2)性感染症の知識、(3)コンドームについて学びました。
同意の大切さを学ぶにあたり、Tea Consentの動画を見ました。(https://youtu.be/-cxMZM3bWy0 )
レイプが如何に本人の意思を欠いたものなのか、簡単に分かる動画です。
私がこれを初めて見たのは早稲田大学での講義でした。セクシュアリティに関する授業だったので、ある程度性に興味理解のある学生たちが集まっていたはずです。私たちはこれをシンとした雰囲気の中で見ました。立ち入ってはいけないエリアに、こそこそと入るように。
でもP6では皆で笑って、怒って、納得して、まるで一緒にアクション映画でも見ているような盛り上がりでした。「性について語っても良いのだ」と後押しされた気がします。
話を戻します。「積極的な同意」とは何なのでしょうか。P6では【NoではなくYesを待とう】という考え方を大切にしています。つまりYes以外の応答は、首をかしげる等含めて全てNoの意味だということです。
日本でのレイプ等のニュースで、「抵抗されなかったから大丈夫だと思った」などという供述を耳にしたことはありませんか?この発言は悪い例で、明らかにNoを基準に性的同意を取ろうとしています。
重要なのはYesを基準に性的同意を取ること。Yesの回答が無ければそれはNoの意味なので、その場合は性行為に及んではいけません。
しかしYesと言うことに抵抗がある方もいらっしゃるかと思います。そういう方には、決まったパートナーがいる場合には予めYesのサインを決めておくことをお勧めします。決めることすら恥ずかしいかもしれませんが、自分と相手の心や体のためにも話し合う価値はあると思います。
母子感染の予防のように、把握していないと予防できないものもあります。そこで必要なのが検査です。HIV検査なら日本の保健所へ行けば無料で、しかも匿名で受けられます。自分のために、大切な人のために、検査へ行きましょう。
種類だけではなく、使用上の注意についても学びます。例えばオイルベースで作られている潤滑剤と一緒にコンドームを使ってはいけないということや、同じセックストイを誰かとシェアする場合にもコンドームが必須であることなどです。
少しでも羨ましいと思った方必見!日本でも、コンドームソムリエAiさん(https://twitter.com/Ai_con_j )という方がコンドーム試触会を開催していらっしゃいます。コンドームについて知りたいという方は参加してみてはいかがでしょうか。 (https://note.mu/kobamizu/n/nbb7ff7b828c7 )
これら以外に口すっぱく言われたのは「誰もがセックスをするとは限らない」ということと「男女間、2人でのセックスとは限らない」ということです。例えば「彼氏/彼女」ではなく「パートナー」と言ったりすることで相談してきてくれる人が不快な思いをしないよう気をつけています。
このような活動内容を友達にも隠さずに話しているので、普段は話しにくい性の話ですが、質問や相談をうけることが多いです。活動をする中で、
皆、表に出さないだけで性の正しい知識を欲してるんだ!!
と感じています。私が友達の質問に答えた内容が、ピアエデュケーションとしてその人のお友達へと伝わることもあるでしょう。だからこそ私は正確で中立な情報を提供するように心がけています。
イベントとは別にLGBTQ+コミュニティもあります。私たちのLGBTQ+コミュニティでは「LGBTQ+の人たちを尊敬し、受け入れられる人」なら誰でも歓迎しています。もちろん当事者が嫌な思いをしないようにする為でもありますが、この決まりは自分のセクシュアリティをカミングアウトしたくない人にも来やすい環境を作っていると思います。セクシュアリティに寛容そうなスウェーデンでも、偏見の目を持つ人はいるそうです。だからこそ、私たちは「安全な居場所」にこだわっています。
全員が居心地の良い空間にする為、イベント前には必ず「呼ばれたい名前と代名詞」を言います。中には本名とは違う名前で参加する人やHe, She, Theyどれでも良いという人もいます。他の場所では見せることが出来ない「自分」としてイベントやコミュニティに参加することができるということです。
LGBTQ差別をなくすことを目的に開催されるイベント、レインボープライドには毎年参加しています。
「おっ!コンドームだ!ありがとう!」と言って受け取る人もいれば「えっ...いらないんだけど...」と拒否されることもあります。
面白いのが、一度個人的に断った人でも同じグループ内でもらう友達が多いと受け取ってくれることがあるということ。私はこれに大きな可能性を感じています。 マイノリティというのは、その所属しているコミュニティの中で約3割同じ立場や意見を持つ人がいて初めてマイノリティの主張として認識してもらえるという話を聞いたことがあります。
つまり、どれだけ声を大にして主張していても、その割合が1割程度だと、意見として認められないということで、3割になってはじめて行動に移せる可能性が出てくるということです。今回のコンドームレイドで言うと、コンドームを欲しいと10人全員がが思っていなかったとしても、3人程度の貰うという行為が他の7人の背中を押し、10人全員が貰う可能性があるということです。
これはきっと何事にも言えること。皆が同じことを思っていても3割の人間が声を上げないことには何も変わらないのです。だから私たち若者は今、その3割となり、社会を変えなければならないのではないでしょうか。
早速フリーコンドーム!オフィスが閉まっている日も安心なんです! また、上部にはHIVに対する正しい知識が掲示してあります。
オフィスへ入ると20種類以上のフリーコンドームがお出迎え
もちろんレシーバーコンドーム(women's comdomという通称ですが「女性」と限定したくないため、私たちはreceiver condomと呼んでいます)やデンタルダム(オーラルセックス時、性感染症防止の為に使うもの)も全て無料で用意しています。
どこから「無料」のコンドーム費用が出ているのか気になるところ。実はずっと政府が私たちに投資してくれていたのです。今年度からはそれが打ち切りになってしまうのですが、これからはスウェーデンの性教育を担ったりコンドームを作ったりしているRFSUという団体が代わりに資金援助、コンドームの支給をしてくれます。日本にも、基本的な健康を自分で守れるような投資が欲しいですね。
日本の避妊法は男性主体のコンドームが主流です。しかし海外ではシールや注射、女性用コンドームに薬など、女性自身が自分にあった避妊法を選ぶことができます。日本ではその選択肢すら知られていません。知られなければニーズも生まれないので流通することもありません。
日本は女性の性の健康において相当な遅れを取っています。
例えば勃起薬のバイアグラは登場から認可されるまでに1年もかからなかったのに対し、ピルの認可には30年以上もかかりました。ピルが認可されてから20年経った今でさえ、安価に買うことはできません。
妊娠出産するのは女性なのに、女性が主体的に避妊することが難しい。学校では自分を大切にしましょうと言われるのに、自分を大切にする術がない。こんな日本は異常だと思いませんか?
性教育は性行為を助長するということで、反対意見が多数あります。しかし、現在日本では年間約400件もの小中学生の妊娠が報告されています。性教育をしなくても、性行為をする小中学生が少なくとも400人はいるということです。
これは健康面だけの問題ではありません。女子生徒は出産のために学校へ行けなかったり、高校生だと最悪の場合退学させられてしまいます。進学が困難になることで就職に支障が生じ、安定した収入を確保することが出来ない可能性も十分に考えられます。また、世帯収入と子どもの成績が比例しているというデータがあります。つまり端的に言ってしまうと、妊娠時期を理由に低収入になった場合、、その子どもの成績が低くなる傾向にあることになります。成績が低いと進学が困難なので、就職も難しい。するとその子が家庭を作った時、また同じことが起こるのです。この負の循環は深刻な問題で、簡単に断ち切ることは出来ません。
だからといって、コンドームを付けない男性が悪いとは言い切れません。もちろん、男性は絶対にコンドームを付けるべきですよ。ラテックスアレルギーの方が使えるコンドームもありますし、様々な形状のコンドームがあるので付けられない理由はありません。
でも、誰も教えてくれないのに「男性は性の知識を知っているべきだ」という性役割はどうかと思うんです。情報源が友達とネットでは、間違ったことを信じてしまうこともあるでしょう。だからこそ性別に関わらず全員が、正しい性の知識を得ることが大事ではないでしょうか。
性へのアクセスが欠如していることが当たり前の日本では、今まで問題視すらされてきませんでした。
この記事がそんな日本の性について考えていただきたくきっかけになったら嬉しいです。私が尊敬している#なんでないの プロジェクトの福田和子さんはスウェーデン留学を経て日本のセクシュアルヘルスを守る活動をされており、今注目を集めています。
このような活動に少しでも共感してくださいましたら、世の中を変える3割の一員として声をあげ、その仲間を5割6割と増やしていき、日本の性の現状を一緒に変えていきましょう。
団体URL: http://projekt6.se/en/
今回はこの問題に取り組んでいる学生団体、Projekt Sexについてお話しします。
目次
- Projekt Sexってなに?
- 特徴
- 活動内容
- 日本の現状
- まとめ
Projekt Sexってなに?
SEXはスウェーデン語で6という意味。だからプロジェクトセックスは通称P6と呼ばれています。20世紀後半、性病の流行が問題視され始めました。それに対し、現地の病院はポスターを使って検査や予防を促したそうです。しかしその効果は一時的なもので、長期的な学生たちの健康のためには、性に対する正しい知識を身につける必要がありました。そのために活動を始めたのがP6です。
P6は身体的、精神的、社会的なレベルで性の健康を促進しているルンド大学の学生による、学生のための団体です!
様々なセクシュアリティへの理解を高める活動もしています。
特徴
性の健康を目的として活動する上で大切な考え方と手段について紹介します。セーファーセックス safer sex
セックスは人生を豊かにしますが、病気や望まない妊娠などの可能性と隣り合わせの行為です。完全に安全なセックスなどは存在しないので、「より安全な」という意味でセーファーセックスを目指しています。私たちからするとコンドームは避妊具ではなく、あくまで性感染症の予防という認識。写真のようにSTI(性感染症)の検査ができる近くの病院をリストアップして紹介しています。
こちらの病院、なんと私たち留学生も無料です。さすがスウェーデン!
この検査で聞かれることはたった1つだそう。
「いつ頃から性病を疑い始めましたか?」
これを聞けば不安全な性行為を行った時期、ウイルスの潜伏期間が分かるということですね。的確で無駄がなく、相手を不快にさせないこの質問には感動しました。
ピア・エデュケーション peer-education
P6ではピアエデュケーションを採用しています。ピアエデュケーションとは、性の悩みを同年代が相談役となり教え合うことで解決を目指す取り組みです。ピアエデュケーションは、先生や専門家が教えるよりも性教育の分野において効果があると言われています。だからこそP6に関わる方法は以下の3つ。
・メンバー member
イベントに参加したりニュースレターで情報を得る
・エデュケーター educator
2日間に及ぶレクチャーで得た知識をP6のアクティブメンバーとして広める
・オフィサー officer
エデュケーターの中から立候補し、性教育、LGBTQコミュニティーなどのイベントを幹部として運営する
ピアエデュケーションを大事にしている私たちは、イベント参加やニュースレター購読だけの人たちのことも大事なメンバーと見なしています。エデュケーターとオフィサーは「アクティブメンバー」と呼ばれており、受け身でもいられる「メンバー」と違って主体的にP6の一員として働くことが求められます。
私はエデュケーターとして活動していました。主にコンドームレイドをしたりイベントのお手伝いをしたり、オフィスに在籍したり、さりげなく友人に性の話題を振ってみたりしていました。
エデュケーターになるためのレクチャーでは主に(1)同意の大切さ、(2)性感染症の知識、(3)コンドームについて学びました。
(1)同意の大切さ
スウェーデンでは2018年から「当事者たちの積極的な同意が無い性行為はレイプ」だと定義することになりました。対して日本でのレイプ(強制性交等罪)は「暴行又は脅迫を用いた性行為」と定義されています。つまりスウェーデンでは暴行の有無にかかわらず、同意が無ければそれはレイプなのです。それだけ、「同意」が重要視されています。同意の大切さを学ぶにあたり、Tea Consentの動画を見ました。(https://youtu.be/-cxMZM3bWy0 )
レイプが如何に本人の意思を欠いたものなのか、簡単に分かる動画です。
私がこれを初めて見たのは早稲田大学での講義でした。セクシュアリティに関する授業だったので、ある程度性に興味理解のある学生たちが集まっていたはずです。私たちはこれをシンとした雰囲気の中で見ました。立ち入ってはいけないエリアに、こそこそと入るように。
でもP6では皆で笑って、怒って、納得して、まるで一緒にアクション映画でも見ているような盛り上がりでした。「性について語っても良いのだ」と後押しされた気がします。
話を戻します。「積極的な同意」とは何なのでしょうか。P6では【NoではなくYesを待とう】という考え方を大切にしています。つまりYes以外の応答は、首をかしげる等含めて全てNoの意味だということです。
日本でのレイプ等のニュースで、「抵抗されなかったから大丈夫だと思った」などという供述を耳にしたことはありませんか?この発言は悪い例で、明らかにNoを基準に性的同意を取ろうとしています。
重要なのはYesを基準に性的同意を取ること。Yesの回答が無ければそれはNoの意味なので、その場合は性行為に及んではいけません。
しかしYesと言うことに抵抗がある方もいらっしゃるかと思います。そういう方には、決まったパートナーがいる場合には予めYesのサインを決めておくことをお勧めします。決めることすら恥ずかしいかもしれませんが、自分と相手の心や体のためにも話し合う価値はあると思います。
(2)性感染症の知識
ここでお伝えしたいのは、性感染症予防と検査の重要性です。例えばHIVの感染経路は血液感染、性的感染、母子感染です。性的感染に関してはコンドームを使うことで防げますし、母子感染も事前に分かっていれば帝王切開や母乳を飲ませないことなどで感染が防げます。母子感染の予防のように、把握していないと予防できないものもあります。そこで必要なのが検査です。HIV検査なら日本の保健所へ行けば無料で、しかも匿名で受けられます。自分のために、大切な人のために、検査へ行きましょう。
(3)コンドームワークショップ
コンドームはプラスチックのものからドット付き、匂い付きまで様々です。このワークショップではオフィスにある全種類のコンドームを使って嗅いだり触ったりしました。スウェーデンの若者はP6オフィスやユースクリニックへいくことで無料のコンドームを手に入れることが出来ますが、日本の学生にとっては安価なものではありません。少なくとも私にとっては貴重な経験でした。種類だけではなく、使用上の注意についても学びます。例えばオイルベースで作られている潤滑剤と一緒にコンドームを使ってはいけないということや、同じセックストイを誰かとシェアする場合にもコンドームが必須であることなどです。
少しでも羨ましいと思った方必見!日本でも、コンドームソムリエAiさん(https://twitter.com/Ai_con_j )という方がコンドーム試触会を開催していらっしゃいます。コンドームについて知りたいという方は参加してみてはいかがでしょうか。 (https://note.mu/kobamizu/n/nbb7ff7b828c7 )
これら以外に口すっぱく言われたのは「誰もがセックスをするとは限らない」ということと「男女間、2人でのセックスとは限らない」ということです。例えば「彼氏/彼女」ではなく「パートナー」と言ったりすることで相談してきてくれる人が不快な思いをしないよう気をつけています。
このような活動内容を友達にも隠さずに話しているので、普段は話しにくい性の話ですが、質問や相談をうけることが多いです。活動をする中で、
皆、表に出さないだけで性の正しい知識を欲してるんだ!!
と感じています。私が友達の質問に答えた内容が、ピアエデュケーションとしてその人のお友達へと伝わることもあるでしょう。だからこそ私は正確で中立な情報を提供するように心がけています。
活動内容 (下で詳しく紹介します)
P6では主に3つの活動を行っています。この3つについて順に詳しく説明していきます。- イベントの開催
- コンドームレイド condom raids (イベントでのコンドーム配布)
- オフィス運営
活動1:イベント
月に1回、皆でディスカッションするイベントが行われます。性に興味がある人や知識を付けたい人など、誰でも行くことのできるイベントです。議題はBDSM(いわゆるSM)についてやメディアでのポルノの扱われ方など。日常では中々話さないような性のトピックを議論します。イベントとは別にLGBTQ+コミュニティもあります。私たちのLGBTQ+コミュニティでは「LGBTQ+の人たちを尊敬し、受け入れられる人」なら誰でも歓迎しています。もちろん当事者が嫌な思いをしないようにする為でもありますが、この決まりは自分のセクシュアリティをカミングアウトしたくない人にも来やすい環境を作っていると思います。セクシュアリティに寛容そうなスウェーデンでも、偏見の目を持つ人はいるそうです。だからこそ、私たちは「安全な居場所」にこだわっています。
全員が居心地の良い空間にする為、イベント前には必ず「呼ばれたい名前と代名詞」を言います。中には本名とは違う名前で参加する人やHe, She, Theyどれでも良いという人もいます。他の場所では見せることが出来ない「自分」としてイベントやコミュニティに参加することができるということです。
LGBTQ差別をなくすことを目的に開催されるイベント、レインボープライドには毎年参加しています。
活動2:コンドームレイド Condom Raids
コース料理を楽しむ正式なパーティーの後に行われるアフターパーティーや、Valborgと呼ばれる年に一度の飲みまくる日にコンドームを配りました。アフターパーティーやValborgではひどく酔っ払う人が多く、その流れで性行為に及ぶ人が多数いるということで、予防的な意味でコンドームを配っています。 参加当初は「フリーコンドーム」と叫びながら歩くことに抵抗があり、恥ずかしかった覚えがありますが、沢山言うと慣れてくるんですよ。「おっ!コンドームだ!ありがとう!」と言って受け取る人もいれば「えっ...いらないんだけど...」と拒否されることもあります。
面白いのが、一度個人的に断った人でも同じグループ内でもらう友達が多いと受け取ってくれることがあるということ。私はこれに大きな可能性を感じています。 マイノリティというのは、その所属しているコミュニティの中で約3割同じ立場や意見を持つ人がいて初めてマイノリティの主張として認識してもらえるという話を聞いたことがあります。
つまり、どれだけ声を大にして主張していても、その割合が1割程度だと、意見として認められないということで、3割になってはじめて行動に移せる可能性が出てくるということです。今回のコンドームレイドで言うと、コンドームを欲しいと10人全員がが思っていなかったとしても、3人程度の貰うという行為が他の7人の背中を押し、10人全員が貰う可能性があるということです。
これはきっと何事にも言えること。皆が同じことを思っていても3割の人間が声を上げないことには何も変わらないのです。だから私たち若者は今、その3割となり、社会を変えなければならないのではないでしょうか。
活動3:オフィス紹介
活動拠点として運営しているオフィスについても紹介したいと思います。オフィスのドアまで行くと…?早速フリーコンドーム!オフィスが閉まっている日も安心なんです! また、上部にはHIVに対する正しい知識が掲示してあります。
もちろんレシーバーコンドーム(women's comdomという通称ですが「女性」と限定したくないため、私たちはreceiver condomと呼んでいます)やデンタルダム(オーラルセックス時、性感染症防止の為に使うもの)も全て無料で用意しています。
どこから「無料」のコンドーム費用が出ているのか気になるところ。実はずっと政府が私たちに投資してくれていたのです。今年度からはそれが打ち切りになってしまうのですが、これからはスウェーデンの性教育を担ったりコンドームを作ったりしているRFSUという団体が代わりに資金援助、コンドームの支給をしてくれます。日本にも、基本的な健康を自分で守れるような投資が欲しいですね。
日本の現状
スウェーデンではピルやその他避妊法が基本的な健康を守る権利として備わっています。それはスウェーデンだからではなく、世界的なスタンダードになってきています。日本の避妊法は男性主体のコンドームが主流です。しかし海外ではシールや注射、女性用コンドームに薬など、女性自身が自分にあった避妊法を選ぶことができます。日本ではその選択肢すら知られていません。知られなければニーズも生まれないので流通することもありません。
日本は女性の性の健康において相当な遅れを取っています。
例えば勃起薬のバイアグラは登場から認可されるまでに1年もかからなかったのに対し、ピルの認可には30年以上もかかりました。ピルが認可されてから20年経った今でさえ、安価に買うことはできません。
妊娠出産するのは女性なのに、女性が主体的に避妊することが難しい。学校では自分を大切にしましょうと言われるのに、自分を大切にする術がない。こんな日本は異常だと思いませんか?
性教育は性行為を助長するということで、反対意見が多数あります。しかし、現在日本では年間約400件もの小中学生の妊娠が報告されています。性教育をしなくても、性行為をする小中学生が少なくとも400人はいるということです。
これは健康面だけの問題ではありません。女子生徒は出産のために学校へ行けなかったり、高校生だと最悪の場合退学させられてしまいます。進学が困難になることで就職に支障が生じ、安定した収入を確保することが出来ない可能性も十分に考えられます。また、世帯収入と子どもの成績が比例しているというデータがあります。つまり端的に言ってしまうと、妊娠時期を理由に低収入になった場合、、その子どもの成績が低くなる傾向にあることになります。成績が低いと進学が困難なので、就職も難しい。するとその子が家庭を作った時、また同じことが起こるのです。この負の循環は深刻な問題で、簡単に断ち切ることは出来ません。
だからといって、コンドームを付けない男性が悪いとは言い切れません。もちろん、男性は絶対にコンドームを付けるべきですよ。ラテックスアレルギーの方が使えるコンドームもありますし、様々な形状のコンドームがあるので付けられない理由はありません。
でも、誰も教えてくれないのに「男性は性の知識を知っているべきだ」という性役割はどうかと思うんです。情報源が友達とネットでは、間違ったことを信じてしまうこともあるでしょう。だからこそ性別に関わらず全員が、正しい性の知識を得ることが大事ではないでしょうか。
まとめ
日本では女性の主体的な避妊法の欠如、正しい知識の欠如によって心身の健康が阻害されたり、教育の機会を失ったり、性役割に苦しんだりしている人がいます。これらを変えるには避妊法の増加と性教育を同時に推し進めていく必要があると思います。性へのアクセスが欠如していることが当たり前の日本では、今まで問題視すらされてきませんでした。
この記事がそんな日本の性について考えていただきたくきっかけになったら嬉しいです。私が尊敬している#なんでないの プロジェクトの福田和子さんはスウェーデン留学を経て日本のセクシュアルヘルスを守る活動をされており、今注目を集めています。
このような活動に少しでも共感してくださいましたら、世の中を変える3割の一員として声をあげ、その仲間を5割6割と増やしていき、日本の性の現状を一緒に変えていきましょう。
団体URL: http://projekt6.se/en/