わたしが生きたい社会ってどんなだろう?
そのヒントは、北欧にあるかもしれない。

わたしたちが北欧で見たこと、感じたこと、そして、語りたいこと。
大学生たちが現地よりお届けします。

「社会を動かす北欧デザイン」イベントレポート




2020年6月、わたしたちの北欧がたり。が初のオンラインイベントを実施しました!

テーマは「社会を動かす北欧デザイン」

優れたデザインと発達した民主主義、デンマークは両方を兼ね備えている国です。日本の民主主義や社会を変えていく動きを加速させるために、私たちが北欧から得られるヒントは何か?と考えて、「デザイン」をテーマに選びました。

この記事では、イベントでお話しした内容の一部をレポートします!


ゲストの紹介

今回のイベントではデンマークのデザイン・民主主義をよく知るお二人の方をゲストにお招きしました。


平山みな美さん

グラフィックデザイナーの平山みな美さん(以下 みな美さん)と北欧がたりのメンバーは、デンマークで出会いました。当時、みな美さんがデンマークのデザイン事務所でインターンシップをしていた頃に、北欧がたりのメンバー、ゆうかのTwitterにDMをくれました。今は私たちが中心となって立ち上げた「NO YOUTH NO JAPAN」のデザインも担当してくださっています。



ニールセン北村朋子さん

北欧がたりメンバーのちかが大学1年生の冬に知り、デンマークに行くきっかけかけとなったのがニールセン北村朋子さん(以下 朋子さん)です。北欧がたりのメンバーがデンマークにいた頃、一度朋子さんが住むロラン島に遊びに行かせてもらいました。

また、現在朋子さんがデンマークで設立を目指されているインターナショナル・フォルケホイスコーレの夏の短期コースに、メンバーのももが参加させていただきました。その際のレポートはこちら


当日のプログラム

アイスブレイク:北欧クイズ!

レクチャー1:デンマークの民主主義の話

レクチャー2:社会を動かす北欧デザインの例

パネルディスカッション:日本へのヒントを探して・・・


このレポートではレクチャーとパネルディスカッションの一部をご紹介します!


レクチャー1:デンマークの民主主義の話

レクチャー1では、「デザイン」の話の前に、どんな価値観があるのか?という話をシェアしました。ただお洒落なデザインとしてではなく、一人一人が参加して社会をつくっていると感じられる国だからこそ、「社会を動かすデザイン」が価値を持つのだと思っています。


デンマークで感じた民主主義 5つの特徴

北欧がたりのメンバーがデンマークに留学して何よりも感じたのは、社会の根底に「民主主義」という価値観が根強くあり、全ての基本になっているということ。この「民主主義」について感じた5つのポイントをシェアしました!


デンマークで感じた民主主義① とにかく投票率が高い!

2015年の総選挙では、全世代投票率が80%前後で高くなっています。日本と比較し、高齢者層と若年層の投票率の差が小さいことも特徴だと思います。



デンマークで感じた民主主義② 政治家が若い&女性も多い

現在の首相は41歳。閣僚の平均年齢も41.8歳、日本と比べると20年ほど若い人たちが政治の場で活躍しているようです。


デンマークで感じた民主主義③ 声を上げて動けば、政治を変えられる。

政治の活動をしている友達に話を聞くと「だってやれば社会は変わるから」と答えます。小さな成功体験をたくさん積んでいるからこそ、政治に関わろうと考える若者が多いと感じます。


デンマークで感じた民主主義④ 民主主義の学校:フォルケホイスコーレ

民主主義の担い手を育てることをコンセプトに置く、18歳以上なら誰でも入学でき、成績・試験がない全寮制の学校。対話の中で共に学ぶ環境があります。


デンマークで感じた民主主義⑤ 幼稚園から自分で考えられる人を育てる

民主主義の基本は、それぞれが意見を持ち、それを持ち寄ること。デンマークでは幼稚園の頃から自分の意思や決定を尊重する教育が実践されています。



レクチャー2 社会を動かす北欧デザインの例

レクチャー2では本題の社会を動かす北欧デザインの事例をご紹介。北欧がたりのメンバーやゲストの方が一押しの北欧デザインをシェアしましたので、ご紹介します!


Superkilen (なお)

コペンハーゲンの中で、移民がとても多く住んでいる地域にある公園Superkilenは、地域に人のつながりを生むためにつくられました。公園には、この地域に住んでいる人々の出身国から持ってきた遊具やオブジェが配置されており、色々な国から移り住んだ人がなつかしさや安心を感じる場所になっています。またそのような色々な国のものが1つの場所に混ざり合うことで、地域の多文化に訪れた人々がわくわくすることができます。

この公園のおかげで、地域の治安が改善したり違う国出身の人同士の一体感が生まれたりと、社会を変える色々な影響がありました。最近では、移民の人の問題意識の高いテーマでデモが開催されるときの出発地点がここになるなど、人々のアイデンティティを象徴する場所とも言えそうです。



デザインスクールの授業もインタラクティブ(平山義活さん)

北欧がたりのメンバーとともにNO YOUTH NO JAPANで活動している平山義活さんも、デンマークで出会った一人。デンマークのデザインスクールに留学していたときに感じた、デンマークの学校の民主主義が根付く様子を紹介してくれました。

デンマークで出会い、北欧がたりメンバーと親交の深い平山さんは、留学していたデザインスクールの授業後のEvaluationについて紹介してくれました。先生を囲んで学生が授業についての評価を伝えるのが、Evaluaitionの時間。先生と生徒が授業で教える・教えられるという関係性であるだけでなく、生徒から先生に意見を伝えるという、日本ではあまり見られない光景です。ものをデザインするだけでなく、学生にも開かれた授業という時間のつくりかたも、北欧らしいデザインだと感じたそうです。


オーガニック認証マーク(ゲスト みな美さん)

ほとんどのデンマーク人がこのオーガニック認証マークを知っていて、8割の人がこのマークを買い物の基準にしているというデータもあります。環境に優しい商品やオーガニック商品は日本などでは「緑の葉っぱ」がアイコンとなりがちですが、デンマークの認証マークは国民から愛されるデンマーク王室の王冠と、デンマークの国旗の色でもある赤を使用しています。人が自然とオーガニック商品を選ぶという良い循環をつくりだす素敵な仕掛けを教えていただきました。


反・反移民を訴えるムーブメントが起きたポスター(ゲスト みな美さん)

欧州ではたびたび移民の受け入れについて議論されていますが、デンマークは現在は移民の受け入れに厳しい対応を取っている国という側面もあります。2002年、反移民の世論が大きくなった際に、移民受け入れ肯定派の中で流行ったのが”Foreigners, Please Don's Leave Us Alone with The Danes”(海外の方々、デンマーク人たちの中に私たちを取り残さないで!)と書かれたポスター。このポスターは、国立美術館の展示の一部にもなっていて、誰でも自由に持ち帰ることができます。目を引くデザインはもちろん、共感する人がポスターを持ち帰るというアクションをしやすい仕掛けも北欧デザインと言えそうです。


市民の「知りたい」から始まった反原発運動(ゲスト 朋子さん)

デンマークでは、一度原発の導入が議論されたのにもかかわらず、国民的な議論を展開し原発の導入案は廃止され、現在は風力発電などの再生可能エネルギーのシェアが高く、世界をリードする結果にもなっています。

他の欧州各国で「ドクロマーク」が普通だった反原発運動。1970年代以降、デンマークでこの原発に関する運動に、サーカスなどの楽しい要素を入れてみんなが楽しめるものになりました。そのおかげで、家族で参加できるなど多くの人にデモをひらく形となりました。


市民のための家具(ゲスト 朋子さん)

北欧は優れた家具デザインでも有名です。しかしそのどれも高価で、お金がある人のためだけだった北欧の家具を、普通の人たちも買えるものにしたのがFDB Møblerです。スウェーデンのIKEA がこの系譜にあるという話も。今のIKEAのスタイルには賛否両論あるらしく、現在はFDB Møblerが再興しているそうです。


パネルディスカッション 日本の民主主義や公共空間の発展のために


レクチャーを受けて、みな美さん・朋子さん・私たち北欧がたりのメンバーで、実際の日本の事例を見ながら、北欧デザインの視点でどのように良くすることができるのか、ディスカッションをしました。


事例1 政府の補償金などの案内

コロナ禍の給付金などを受給するための資料・サイトを比較。

日本の行政資料は分かりにくい…という意見が多かったです。

一方、デンマークのサイトデザインは、案内から申請までノンストップにみんなが使いやすいもの。行政への信頼感を高めていくのにも役立つと感じました!

  • デンマークのサイトのイメージはこちらから見られます
  • 日本の特別定額給付金(いわゆる10万円給付)の説明ページはこちら


事例2 男女だけではないピクトグラム

デンマークでよく見たのは、男女別だけではないトイレの見せ方。色を黒だけにする、男女以外の性のためのピクトグラムをつくる、などの方法が見られます。

また、オムツ替えの台も男女同数に設置されているなど、ステレオタイプ的な女性・男性に縛られない多様な生き方をしやすい基礎がトイレからも見えてきます。


最後に

デンマークのデモクラシーの基礎には、みんなが理解できて自然と参加したくなるような環境をつくるためのデザインが大事な役割を果たしていると感じています。そのデザインは、ものや場所の見た目を美しくわかりやすくするだけでなく、時間の使い方や人々の参加の仕方といった様々なものをデザインする、「広義のデザイン」です。

すべての人にオープンであろうとすることは、コストも手間もかかる。それでもそこに価値をおくことで一人ひとりが生きやすい社会がつくられていくのだと思います。