わたしが生きたい社会ってどんなだろう?
そのヒントは、北欧にあるかもしれない。

わたしたちが北欧で見たこと、感じたこと、そして、語りたいこと。
大学生たちが現地よりお届けします。

《レポート》デンマーク・ロラン島で「食」を学ぶサマーアカデミーに参加してきました!


サマーアカデミーの紹介

デンマークで私が参加したのは、歴史的・社会的・感覚的・政治的という4つの観点で「食」を学ぶ「FOOD UNFOLDED」というサマーアカデミー。

 コンセプトは私たちの生活と切り離せない「食」についての農業から美食までの一貫した学び。エネルギー自給率700%、風力発電で有名なデンマーク・ロラン島で1週間の宿泊実習が行われました。





 わたしたちが生きている地球では、気候変動や種の多様性の危機、不平等の拡大などたくさんの問題があります。このサマーアカデミーでは、どのようにしたら社会的に、政治的に、そして実際の毎回の食事で、このような問題を改善する動きができるのかということを、実践している方々から学んだり、みんなで体験したりしました。

 また、このサマーアカデミーは「Højskoleprojekt Lolland-Falster」という、「食をテーマにしたフォルケホイスコーレをロラン島につくろう」というフォルケホイスコーレ設立プロジェクトの一環です。

 フォルケホイスコーレをつくることを念頭においているため、朝は歌うところからスタート。一緒に暮らし、講義以外の時間も含めて、たくさん対話をして好奇心のまま学びながら人としての成長を目指す、フォルケホイスコーレのサマーコース版のような感じでした。

このサマーアカデミーで学んだこと

講義であったり、体験・実践であったり、見学であったり、たくさんの内容を色々な方法で学びました!いくつか印象に残っている時間を紹介します。

講義編

・食の人類学

「WE ARE WHAT WE EAT, WE CAN LOOK AT WHAT WE EAT TO UNDERSTAND WHO WE ARE.」(私たちは何を食べるかで形づくられる。つまり、私たちが何を食べるかを見ることで、私たちが何者なのかということを理解できる。)

「食」は社会的でもあると言えます。何かを見つけたとき、私たちの「食用か非食用か」という判断が、その対象はその社会でどのように許容されるかに基づくことがあるからです。例えばウサギを食べるか、昆虫を食べるか、刺身を食べるかは、地域や社会によって判断が異なりますよね。

「食」の新しい見方を知ったと同時に、普段「食」に対してそこまで考えていなかったなという気付きを得た講義でした。




・パーマカルチャーとエコビレッジ

「パーマカルチャー」とはパーマネント(永久的な)とアグリカルチャー(農業)を合せた言葉で、人間にとっても地球にとっても恒久的持続可能な環境を作り出すための農業のデザイン体系のことです。 「パーマカルチャーって何?」というお話から、実際にパーマカルチャーを実践しているエコビレッジ のお話を聞きました。とにかく内容がおもしろかったです。すごく大事な視点であり重要なことだなと感じたので別に記事を書いてみようと思います。


他にも…
・食の主権(Food Sovereignty)
・シェフFrancis Cardenauによる講義
・科学的視点からの食(DNA構造など)
など新しい視点を得ることができる授業がたくさんありました!本当に面白かったです。

体験編

・外で料理セッション3回!

みんなで外で焚き火で料理をしました。(デンマークでは焚き火をよくやります。が、いつもは囲んでお喋りするだけだったので、料理は初めてでした!)ピクルスをつくったり、五味を全て入れるハンバーガーを一からつくったり、レシピなしで学んだことを活かしてみたり…毎回テーマがあって、チームで協力して料理するのは結構面白く楽しかったです。


ルーツを使った肉を使わないハンバーグを焼いてます


・野草・実の収集と試食
学校の外に出て、道草を収穫しました。普段歩く道の横に生えている草を食べられるなんて思っていなかったです。これは食べられる?食べられない?と見ながら、収集しました。それをその後の調理実習で使ってみたり。美味しいかどうかは置いておいて、意外といっぱい食べられるものがあるという発見がありました。



他にも…
食と感覚の授業では、オレンジを全身を使って味わったり、目や耳が使えない状態で食事するなどもしました。いかに普段「感覚」を使わずに食事しているか分かりました…


見学編

・ブルワリー(ビール醸造所)

ブルワリーの見学と試飲もさせてもらいました!ヨーロッパのコンテストでも金賞受賞しているご自慢のビールをいただきました。美味しかったですね!

翻訳してくださっている朋子さん


他にも…
オーガニック農家にお邪魔して、こだわりなども教えていただきました。ここでもたくさん食べました。土にあったものを取ってそのまま食べる、美味しかったです!!!



授業以外編;「みんなと一緒に食べる食事・過ごす時間」

・最高に美味しい食事

何といっても食事が毎食本当に美味しかったんです!ボランティアで来てくれている20代デンマーク人たちは、できるだけゴミを出さない&毎日違う国の料理をつくってくれるのですが、本当に絶品でした。


・授業以外も一緒に過ごすたくさんの時間

フォルケホイスコーレの醍醐味は授業以外にあるといっても過言ではありません。このサマーアカデミーも例に漏れず。
1週間という短い時間ではありましたが、「寝食を共にする」と授業で習う知識だけでなく、人間関係や自分の人生観についてなど新しい学びや気づきも多いですし、打ち解けるのも早いです。フォルケホイスコーレの目指す「人としての成長」はまさに、人との関わりの中にある気がします。



まとめ

一括りに「食」といってもたくさんの面があります。
美味しいものを食べて、その奥にあるストーリーや社会的な構造、また、自分の食べるという行為が及ぼす見えない影響について知って考えること。また、食べる行為に集中して「感覚」を研ぎ澄ましてみる。
こんなに「食」に集中した1週間は初めてだったと思います。




参加してみて思ったこと

わたしたちが生きている社会って…

「誰が人間に土地を与えたのか」
「どうしてこれを食べるのか、その背景には何があるのか」
このような深い問いに、答えはありません。
だけど、普段忙しくて考える時間がないけど、このサマーアカデミーではちょっと考えてみる。そんな時間でした。
この時間は、私が当たり前に生きてきた利便性を重視し気候や自然、ローカルコミュニティを蔑ろにしている社会を客観視するきっかけにもなりました。

商業主義にまみれ、普段の生活では気づかないほどに、わたしたちの生活は便利に溢れています。

消費者の立場から見ると、スーパーに行けば勝手に食材が並んでいるし、お金を払えば何でも買える。そのとき、その食材の裏にどんな人がどんな想いでどんな条件で働いているのか、それが地球に与える影響や産業構造に自分が加担しているということを考える余裕もありません。
今の当たり前は100年前は想像もできなかったくらい便利で、便利の先に私たちは何を求めているのか、そんなことを考えずに生きています。

それに、便利を求めすぎた今、気候変動はもはや幻想ではなく現実です。
予測ではなく今すでに進んでいる問題です。
防がなくてはならないのではなく、いかに速度を落とすのか。
もはや温暖化と共存するしかない時代です。

その中で気候は「食」に大きな影響を与えます。
気候が変わるということは土地が変わるということを意味します。
それはつまり、何が採れるかも変わり、食料確保が問題になります。「貧困からの克服」という産業化が求めてきたことが裏目に出て、先進国諸国では克服した問題がまた問題になっていきます。

「何を食べるか」が人をつくるなら、絶対に「食」は人の生き方に無関係ではありません。
それなのに私たちは、「食」に無知であり、無頓着で無関心になってしまうほど、何に急かされているのでしょうか。


いつか安全で満足いく食事が手に入らなくなって考えるのでしょう。
「誰がこんな世界をつくったのだろうか。」
そしてその時に気付くのかもしれません。
「それは、無頓着に何も考えずに選択を重ねてきた消費者ひとりひとりだ」と。

人類学の講義の中で、自分の毎日の食事自分が何者でどんな暮らしをしている人かを表しているはずであると学びました。
まだ遅すぎることはない。
できる限りをひとつずつ取り組む、それしかないのかもしれません。

もし日本にフォルケホイスコーレ があったら?

このサマーアカデミーはロラン島に住んでいらっしゃるニールセン北村朋子さんが中心メンバーとして企画されていました。そのため、参加者が日本人だけ、というデンマークだけど特異な環境でした。
私は、このプログラムに参加するまでは、デンマーク人が8割を占めるフォルケホイスコーレで暮らしており、その環境とは全く異なるものでした。

授業では、たくさん日本語で話す場所がありました。授業の後に感想を話したり、授業のメモを日本語で共有したり、日本語で考える時間もたくさんありました。

同じ日本人だからこそ、共有している背景があること、言語の壁がないことによる思考の深さは、デンマークのフォルケホイスコーレ で体験したものと全く違うものでした。もし日本にフォルケホイスコーレがあったら…ということを疑似体験する場所でもありました。毎日たくさんの時間を共有し、一緒に話して考えたりすることができた時間は本当に貴重でした。

今回感じたのは同じ日本人で様々な分野、年齢の人が集う刺激とおもしろさです。
でも日本人だけじゃなくて、デンマーク人の素敵なスタッフともたくさん時間を過ごせました。大事なのは言語ではなく共感や同じ問題意識、そして一緒に時間を過ごすことだとも思いました。
そして何より、素直であることの大切さ、学び続けることの大切さを改めて感じました。



まとめると、一緒に過ごしたみなさんへの感謝と、フォルケホイスコーレって良いなぁってことです

自分の生活や人生、その延長線上にある社会について、多様な年代やバックグラウンドを持っている人たちと、ゆっくり考えてみる。
こんな時間をつくれることの豊かさを改めて感じました。