わたしが生きたい社会ってどんなだろう?
そのヒントは、北欧にあるかもしれない。

わたしたちが北欧で見たこと、感じたこと、そして、語りたいこと。
大学生たちが現地よりお届けします。

ベジタリアン、ヴィーガンという選択

留学生活を始めてびっくりしたことの一つ、
周りにベジタリアンやヴィーガンの子がめっちゃ多い!ということ。

留学当初、新しい友達と一緒にご飯を食べたり、料理の話をする中で、自分はベジタリアン、あるいはヴィーガンだと教えてくれる友達が何人もいました。ざっくり言って、5人に1人くらいはベジタリアンなんじゃないかな。これはデンマークでみられる傾向っていうよりは、ヨーロッパ全体的になのかなと思います。

というわけで、今回はベジタリアンやヴィーガンについて書きたいと思います。
主な内容は以下の通りです。(長いです、、。すみません😅)

・ベジタリアン、ヴィーガンとは?
・友人から聞いたベジタリアンやヴィーガンになろうと決めた様々な理由
・フレキシタリアンという考え方
・私が肉の消費を減らそうと思った理由―環境への負荷と食の不均衡
・ デンマークのベジタリアン事情
・日本でも肉の消費は減らすことができそう


ベジタリアン、ヴィーガンとは?

日本に住んでいるときは、ごくごくたまにベジタリアンの子もいる、くらいの印象だったので、かなりびっくりしました。

というか、恥ずかしながら、私はベジタリアンとヴィーガンの違いすら知りませんでした。(「ヴィーガン」は「ベジタリアン」のカッコイイ言い方かな、とか思ってた、、。)

一応、一般的に言われている定義をここにも載せておくと、

vegetarian: (畜)肉、魚を食べない人のこと。
(ちなみに語源はvegetable「野菜」 じゃなくてラテン語 'vegetus'「健全な、新鮮な、元気のある」らしい!知らなかった~。)
vegan: 肉、魚に加えて卵・乳製品も食べない人のこと。動物性食品を食べない。服飾などにも気を遣って、革製品やウールなどを身につけない人もいるらしい。

ベジタリアンとは?日本ベジタリアン協会www.jpvs.org



 

 どうしてベジタリアン、ヴィーガンになったの?

ベジタリアンになるのは、ダイエット的な理由、あるいは宗教上の理由からだとばかり思っていました。自分の頭の中にそれ以外の理由が無さすぎて、理由を聞こうともしなかった。

ある時、3人で喋っていて、そのうちの一人(A)がベジタリアンだと分かり、もう一人の友達(B)が(A)にベジタリアンになった理由を尋ねました。その返答が「環境のため」でした。

私には、すごく衝撃的でした。あまりに想定外な答えだったので。家畜のためにものすごい量の水が使われていること。食糧が使われていること。世界で肉の消費量が拡大していること。バラバラに知ってはいたけど、こんなところでつながるのか!とびっくりしました。

それ以来は、ベジタリアンの子に出会ったらなるべく理由を聞くようにしています。

ある子は、ドキュメンタリーを観て、自国の劣悪な家畜の飼育状態倫理的に賛成できない、自分はその産業の一端を担いたくない、という思いから、ベジタリアンに、そしてその2年後にヴィーガンになったと言っていました。

その子は続けて、「肉を食べるのが悪い、ベジタリアンだから正しい、とかそういうわけじゃない。それはあくまでも個人の選択で、押し付けるのは良くない。私は、自分の価値判断からヴィーガンになったんだ。」というふうに言っていました。

なるほどなあ。自分が食べるもの、消費するものを、きちんと自分の尺度で選んでいるのってすごいな。自分が食べるものがどこからきているのか、自分の消費行動がどんな影響を地球に及ぼすのか、そんなことを考えている。自分と歳の変わらない学生なのに。

また別の子は、「それまでは毎日毎日肉を食べてたんだけど、なんとなく、何日肉無しで生活できるかなーと思って肉を抜いてみたら、意外と大丈夫だし、肉を食べない方が自分は体の調子が良くなったからそのままベジタリアンになった!」 と言っていました。
そんな理由もアリなんだ!と拍子抜けしましたが、「肉を毎日食べること」というある種の「あたりまえ」に対して疑問や違和感をいだけた彼女はすごいなと思いました。

ひとくちにベジタリアンやヴィーガンになるといっても、いろんな理由や考えがその背後にはあるんだなと感じます。

フレキシタリアンとは?

もうひとつ、すごくいいなと思った考え方があります。それが、Flexitarian
flex「柔軟な」の通り、基本はベジタリアンだけど、時と場合に応じて肉や魚も食べる、という人。 フレキシタリアンの友達にもたくさん出会いました。

例えば、普段はベジタリアンだけど、外で用意してもらった食事に肉や魚が入っている場合には残すのは悪いから食べる、とか、本当はお肉がすごく好きなんだけど環境のことを考えて、平日はベジタリアン、肉を食べるのは週末だけにしている、とか。

ベジタリアンっていうとすごい厳格なイメージがあったけど、そうやって柔軟に自分の生活に合うように取り入れることもできるんだなって、すごく素敵なアイディアだなあと思いました。

環境への負荷、アンバランスな世界

私は以前から世界の食のアンバランス(栄養不足や食料不足に苦しむ人がたくさんいる一方で、豊かな世界では肥満が問題になったり、大量の食べ物が捨てられている問題など)に問題意識を持っていました。

なのでベジタリアン、ヴィーガンという文脈でも、肉の消費がかなり環境に負荷を与えていたり、肉の消費のために用いる大量の資源が結局は豊かな世界にばかり行き届いてしまう、ということが私が肉の消費を減らそうと思うようになった上で最も説得力のある理由になりました。

とは言え、肉の消費がどれだけの負荷を環境に与えているか、実際にイメージがわきにくいと思うので、ここで少し紹介したいと思います。Green Monday を引用して紹介します。

畜産業は地球温暖化の最も大きな原因となる産業
畜産業から排出される二酸化炭素はすべての車、トラック、電車、飛行機を合わせた排出量よりも多い。
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https://greenmonday.org/environment/ より引用



食品別 Carbon footprint
1kgの食材を生産するときにどれだけの二酸化炭素を排出しているか。
トマト1㎏生産するのに1.1kg排出するのに対して牛肉1㎏生産すると27㎏排出する。

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生産過程でどれだけの水を使用するか 
500gの小麦の生産に650ℓの水を使用するのに対して500gの牛肉の生産のためには7000ℓの水を使用する。

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https://greenmonday.org/environment/ より引用


日本人が一日に使う生活用水の平均が約300ℓです。(ちなみに世界平均の約二倍の量)
つまり、「250gのビーフステーキを2枚食べるだけで、23人の日本人が一日に使う分の水を消費しちゃってる」ということになります。


飢餓の原因のひとつが畜産
毎年世界では、約26億tの穀物が生産され、これが世界に住む76億人に平等に分配されていれば、1人当たり年間340㎏以上食べられることになります。日本人が実際に食べている穀物は、年間154㎏です。ということは、穀物だけ(野菜などを除いて)で考えると、世界の人口を養うだけの穀物の生産はできていることが分かります。(hunger free world より)

にもかかわらず、世界の飢餓人口は8億2100万人 だといわれています。世界の人口が76憶人とすると、約10人に1人、十分な食べ物を得ることのできない人がいるということになります。

これが起きる一つの要因は、世界の農業生産のうち36%が家畜のエサに充てられていることです。


また、同じ1エーカーの土地を使って大豆を生産する場合と食牛を育てた場合では、得られるたんぱく質の量に大きな差があります。大豆からは166000gのたんぱく質を得て、3320人を養うことができますが、牛肉からは9000gしか得られず、180人しか養うことができません。 (50g/人 で計算。日本人のたんぱく質摂取量の推奨量も、成人男性:60g、成人女性:50g となっています)
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https://greenmonday.org/environment/ より引用




…普段何も意識せずに食べていた肉が、これだけの負担をかけていたと知ると、「ちょっとマズいかも?だったらちょっと食べる量減らしてもいいかな」って思えてきませんか?

でも、やっぱりベジタリアンやヴィーガンになるってハードル高い気はしますよね。正直私もそのうちの一人です。

”vegetarian or not” の二項対立じゃなくたっていいじゃない

「ベジタリアンか、そうじゃないか」の二択で考える必要はないと思います。上述した「フレキシタリアン」の考え方のように、うまく自分の生活に合うように、肉の消費を減らすことは、どんな人にでもできる気がします。

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一日のCO2 排出量 https://www.vox.com/2014/7/2/5865109/study-going-vegetarian-could-cut-your-food-carbon-footprint-in-half より引用


 (heavy meat eaters:99g/日以上、medium meat eaters:48-99g/日、low meat eaters:48g/日以下、pescatarians:魚は食べるベジタリアン)

このグラフから分かるように、完全なベジタリアンやヴィーガンになり、肉の消費をゼロにしなくても、負担を和らげることはできます

デンマークでは?

デンマークは、特別ベジタリアンの多い国というわけではなさそうです。世界でも主要な豚肉の輸出国であり、食文化に豚肉が深く関わっていることがその理由のひとつかなと思います。

しかし、それでもカフェやレストラン、学校の食堂に行けばほとんど必ずベジタリアンの選択肢がありますし、スーパーでもベジタリアン用の食品を見つけることができます。

国内からだけでなく、デンマークを訪れる人たちによる要求も重なって、間違いなくベジタリアンやヴィーガンの流行は高まっているようです。(以下http://cphpost.dk/news/danes-increasingly-favourable-towards-meatless-takeaways.html 参考)

デンマークのセブンイレブンでは、ベジタリアン・ヴィーガンの人も食べられる物を販売しはじめてから、新しい層を顧客に取り入れることができるようになり、売り上げが15-20%増加したそうです。

また、2018年のはじめに行われた世論調査では、55%の消費者が「少なくとも週に一日はあえて肉を食べてない」、15%の消費者が「昨年よりも肉の消費量を減らしている」と回答しています。

Meat Free Monday

肉の消費を減らそうという動きが生まれた一つのきっかけとして、「Meat Free Monday」というキャンペーンがあります。2003年に始まった、「月曜日は肉を食べずに過ごそう!」という、世界的な草の根運動です。デンマークでは2012年からこのキャンペーンが始まりました。大学や企業、NGOなどと提携し、月曜日は食堂で採食を出す、などの取組みがなされました。(今も続いているかは確認できていません)

このように、「週一日採食を取り入れてみよう!」というのもフレキシタリアンの考え方に繋がると思います。できそうなことから、無理のないレベルで食生活を変える良いきっかけになると思います。

日本でも

日本にもこのキャンペーンは伝わっているようで、「ミートフリーマンデー・オールジャパン(MFMAJ)」が活動をしているようです。しかし、私は今回調べるまでこの存在を知りませんでした。この話を身近なところで聞いたことすらありませんでした。

もちろん、私が知ろうとしていなかったり、興味を持っていなかったから、とも言えますが、社会で大きなインパクトをつくるためには多くの人を巻き込むことが必要だと思います。デンマークのように、いかに他の機関と提携してインパクトを大きくしていくかがひとつ大事な気がします。

Meat Free Mondayのように、菜食をしてみるきっかけとなる動きが、日本でももっと活発になったら良いなと思っています。


また、デンマークで暮らしていて改めて日本で食べていたものを考えてみると、あらゆる料理に肉が入っていたり、出汁やスープとして肉や魚を使っていたんだなあ、と感じます。完全なベジタリアンやヴィーガンになる場合は、調味料や出汁なども考慮するため、日本食でベジタリアン、ヴィーガンをするのは少しハードルが高いかもしれません。

ですが、それと同時に、日本の料理では「肉のかたまり」をメインにした料理というより、「薄切り肉」を多く利用する料理が多いのでは、ということにも気づきました。(デンマークをはじめヨーロッパでは薄切り肉はあまり食べられていないため、薄切り肉が手に入りにくいです。)日本は肉の入った料理は多くても、肉の消費量としてはあまり大きくはなっていないのはそのためかな、と思いました。

肉が使われた料理が多い日本食ですが、逆に考えれば、野菜炒めやカレーライスなど、「具材として肉を使っていた料理を肉抜きで(or肉を減らして)作る」 のは比較的簡単なのでは?と思いました。 それくらいのレベルなら、誰にでも取り入れやすいんじゃないかな。

何度も述べているように、肉の消費は、もちろん目的にもよりますが、「少し意識して減らすこと」が大事なのではないかと私は思っています。(反論ももちろんあると思っています)


私自身は、環境への影響や食のアンバランスな観点から、少し肉や魚の消費を減らしています。でも調味料などはあまり気にせず使ってしまっているし、肉を全く食べないわけではありません。

それでも、例えば今まで当たり前のようにサンドイッチに挟んでいたハムや、スープに入れていた肉などは、「無くても良くない?」と思うようになりました。(もちろんそれによって摂取できない栄養素は別から得なければなりません。そのバランスが、難しいなと私は感じています。)

おわりに

ベジタリアンやヴィーガンは、決して過激な考え方ではないと思います。その選択をした理由やその背景にも耳を傾けたり、無意識に肉を消費し続けるのではなく、一旦立ち止まって、「その肉を食べることでどういった影響、負荷をかけているのか」を考えられ、自分の食生活を少し工夫できる人が増えたらいいなと思います。

友人が言っていた通り、何を食べるか?何を消費するか?どう生きるか?は結局個人の選択だと思います。押し付けてはいけないし、強制されてもいけない。

自分のできる範囲で、"自分にも世界にもちょっと良い選択"ができるといいなって思います。


長々と読んでくださりありがとうございました!