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【インタビュー】政治は楽しむもの!デンマークのU30と政治の関わり方

日本では今月7月21日に参議院選挙がありますが、デンマークでも6月に4年に一度の国会の総選挙がありました。投票率が84.5%と高く、多くの若者も投票に行っており、20代の政治家もいます。また驚いたことに、それぞれの政党がユース団体を持っていて、大元の政党とは自立して勉強会やキャンペーン、政策提言を行なっています。今回はデンマークの左派・社会主義人民党(Socialistisk Folkeparti)のユース団体(以下SFU)のメンバー2人に、「デンマークのU30がどのように政治と関わっているか」についてインタビューしました。



 (聞き手:黒住 奈生、能條 桃子、藤井優花/インタビュー:2019年7月11日/編集:藤井優花)



Profile

Kim Høgさん

24歳の現役大学生で、Socialistisk Folkepartiのユース団体コペンハーゲン支部に所属。4年大学を卒業して以前はエンジニアだったが、大学に入り直し現在は日本のビジュアル系バンドの研究で卒業論文執筆中。

Gitte Vellingさん

28歳の社会人。政治学や社会学を学び現在は教育関係の会社で働きながら、同じくSocialistisk Folkepartiのユース団体コペンハーゲン支部に所属。以前はオーフス支部で活動をしていた。

SFUのインスタグラムはこちら

SFUとはどんな団体なのか?

-SFUはどれくらいのメンバーがいるのか教えてください。日本で例えるならば、サークルのようなイメージでしょうか?

SFUにはデンマーク全体で1000人、コペンハーゲン支部だけで200人が参加しています。またSFUは、デンマーク全土に支部を持ち、30歳以下なら誰でも参加できます。デンマークの政治ではU30が若者、という認識ですね。社会人や大学生だけでなくじつは高校生も多く、望めば小学生でも参加できます(実際に小学生のメンバーはまだいないようです)。

コペンハーゲン支部は、市内に専用のオフィスを持っていて、普段は20-30人が毎週ミーティングに来ています。団体の運営費に関しては、自治体や民間からの支援を受けています。特に民間からの支援がすごく面白いんです。私達を支援している団体は、ギャンブルのお金をユース支援に回している団体です。つまり、誰かがギャンブルするとその団体へお金が入り、その団体から私達のユース団体へとお金が回ってくるんです。とても画期的なシステムだと思いませんか?

-なるほど、素敵な仕組みですね!ちなみに大元の政党(SF)と関わりはありますか?

そもそもSF(社会主義人民党)は環境政策に力を入れており、政党全体で女性議員が45%を占めていて、さらには20-30代で当選した政治家もたくさんいます。今回の選挙で獲得した14議席中、11席は女性、5席は30歳以下の議員です。ちなみにSFUの男女比はほとんど同じです。前は60%が女性でしたが、今は54%が女性なので男性とトントンです。

私達は30代以上の政党メンバーに「意見・自分たちの考え」を伝えることができますが、彼らが私達ユース団体の活動に口を出すことはできません。例えば、ユースメンバーがSFの会議に参加する事はできますが、30代以上の政党メンバー大人がユースの集まりに参加する事はできません。

私達のユース団体はSFと良い関係があるからあまりしないけれど、リベラルな政党のユース団体はメディアに意見を投稿し、大元の政党についてバッシングしてプレッシャーをかけることもあります。なので、私達ユース団体の声は非常に大きなものです。

-SFUはどのような活動をされていますか?

SFUの活動は、キャンペーン活動がメインです。選挙時以外でも、自党の大切にしている環境汚染に対する政策のアピールなどの目的で、キャンペーンをやっています。例えば、地球温暖化の原因の一つでもある家畜をイメージした牛のコスプレをして街に立っていた事もありました。牛の格好をしていた理由は、誰にでも見てもらって興味を持ってもらう事が大切だからです。そのため、興味を持つ人を増やすために既存の型に当てはまらないアプローチをしています。
市議会議員選挙のためのキャンペーンの様子。写真左が市議会議員候補Astridさん。ちなみに、写真右は、先日のEU議会選挙で史上最年少21歳で当選したKiraさん。
ほかにも、ブタのハリボテを作って街頭に置くことで多くの人の関心を引き、「これは何のためにやってるの?」と聞かれたら、「SFという環境政策を推進している政党のユース団体として来ていて、環境汚染が進行してるから投票に行こう!」と伝えるキャンペーンをしたり、ヒッピーの格好をして平等な権利について話したりしました。

時には水着で、日焼け止めとアイスクリームを配りながら地球温暖化について話したこともあります。これはクリスマスを祝うクリスマスハットというイベントの一環で11月だったので凍えながらやっていました(笑)こうやって聞くと政治が楽しく感じてくるでしょう?


キャンペーンの中には地元の新聞社が取材に来ていたものもあります。

政治に関するアクションはつまらないものである必要はないと思っています!
若い私達のようなユース団体だからこそコスプレをするなど面白くすることができます。


他にも大学の教授・ジャーナリストなど外部の専門家を呼んでの勉強会・討論会・レクチャーを開催して、主に政治について学び自分たちの知見を磨いています。ディスカッションやアクティビティをすることもありますし、「どのように良いキャンペーンを作るか?どう面白くするか?」についてのワークショップを行うこともあります。また、EU議会の政治家が来て、普段どんな事をしているか聞く会もありました。時には他の政党の人が来て話すこともありましたよ。

-面白いですね。どんな政党の方が来たんですか?

SFUがあまり賛成していない(つまり反対の立場の)政党だったけれど、一つの箱の中で考えるのではなく、広い視点で他方から考えるという意味でいいことだったと思います。

よく覚えてるのは年2回あるデンマーク全体のセミナーで、プラスチック産業で働く方を呼びました。彼は最先端のプラスチック技術の話など、プラスチックの優れている点についての話をしてくれました。

私も含め、私たちのグループの多くのメンバーは、環境にプラスチックは良くないと考えています。しかし、彼はプラスチックはリユースできるけど木製製品はできないなど、環境に良いプラスチックの一面の話などもしてくれました。
そこから私は「環境保護の為にプラスチック反対の立場は変わらないけれど、ただ闇雲にプラスチックは全て悪いものだと決めつけるのは良くない」と気づくことができました。これは私にとっては非常に面白い経験でした。
この回は、多くのメンバーから同様の反響がありましたね。

-自分と反対の人の意見を学ぶというのは面白いですね。
選挙期間中は何か特別な活動をしたんですか?

選挙期間にはポスター掲示やビラ配りを行く場所を決めシフトを組んで行ったり、街頭で政党ブースを作り声かけ運動をしたりしています。キャンペーンマネージャーと呼ばれる人たちは、毎日ほとんどの時間を選挙や候補者についての街頭演説などに使っています。

この選挙時の活動は、私達にとってすごく楽しくて、選挙期間の3週間、大学の授業をすべて休んでしまう人たちもいるくらいです。私もその一人です(笑)

また、普段からコミュニケーションを大切にしていて、街頭に立ってビラを配るだけでなく、その近くに対話ブースを設けて、多くの方に自分の言葉でSFという政党について伝える活動をしています。

SFUの歌集(左)と選挙時に配布するグッズ(右)。グッズのメッセージも実はユーモアたっぷりです。
Carl Valentin候補との記念写真。まるでサークルの集合写真みたい。


デンマークのU30と政治の関わり方について

-SFUでさまざまな活動をしていらっしゃいますが、どこから政治に関する高いモチベーション湧いてくるのでしょうか?

Gitte Vellingさん

私はSFUでの体験が大きな原動力となっていますし、私達の活動に意味があります。それは2012年のことで、当時は医療が無料のデンマークでもメンタルヘルスケアは有料でした。冬の日照時間の少ないデンマークで鬱病は社会問題の一つです。私は、メンタルヘルスケアも無料にすべきと活動を始めました。街中で無料のケーキを配り、「このケーキのようにメンタルヘルスケアも無料にすべき!」と声をあげ多くの人に訴え続けた結果、今回の政権がメンタルヘルスケアを無料にすると表明しました。つまり「本気でやったら、本当に変えられる。It works.」。

また、より多くの若者を、政治に対してアクションを起こす仲間にしたいです。デモに参加する若者が多いように、行動を起こす若者はたくさんいます。私のように自分で国を変える経験をして政治に関わることを楽しんでほしい!


-一般的なデンマーク人大学生と政治の関わりはどうですか?

Kim Høgさん

基本的には、先ほども挙げたデモ参加など、多くの人が30歳までに何かしらの政治活動に関わったことがあると思います。確かに普通の学生同士ではそんなしないけれど、自分は話題に出すようにしています。なので僕自身、友達と政治の話をします。

-大学生が特に注目している政治的なトピックはなんですか?

近年は難民問題を含む外国人政策と、気候変動の2つが大学生の関心の高いトピックで、今回の選挙の争点にもなりました。 しかしながら、移民受け入れ政策を推進する政党はほぼいなく、議会の大多数は環境政策に力を入れています。

ここ10年間で、かなりデンマークはレイシズムが進んだと思います。10年前は「デンマークに来た外国人は受け入れるべきだ」と言っていた政党が複数ありましたが、今はそうではありません。これはデンマークが、第二次世界大戦で起きたことや、未だ世界各国で起きている戦争に加入している事を忘れているからではないでしょうか?
気候変動はこんな感じで最重要トピックの1つです

-お二人の関心があるトピックは何ですか?


Kim Høgさん

僕は気候変動とメンタルヘルスに注目しています。環境問題は言わずもがなですが、お金持ちとか貧しい人だとか関係なく、誰もがメンタルヘルスに悩まされるべきじゃないと思います。だから僕はこの問題に関心を持っています。

Gitte Vellingさん

 デンマークで広がりつつあるレイシズムとハンディキャップへの支援に関心があります。近年デンマークではレイシズムが目立つようになりました。私は難民を含めデンマークに来る外国人を受け入れるべきだと思います。私達はお互いから学び合うことが大切です。また、デンマークでは自閉症を持つ子供のうち35%が不登校期間があること事が問題になっています。教育は平等に開かれているべきです。


この後、逆にお2人から質問を受けながら日本の政治や選挙制度について説明をしました!街宣車の上に立って演説している様子を"Cool!!"と言ってくれたのが面白かったです。

おわりに

今回のインタビューを通じて、政治が若者の身近にあること、若者が政治を「面白くする」という努力をしていること、さらには国を本気で変えられると信じるだけでなくそれを経験していることがとても印象的でした。

日本では今週末に参議院選挙があります。
わたしたちの北欧がたり。では、このブログを始めた5月以降、現地の高校生や大学生にインタビューをさせて頂きながら、日本と北欧の政治参加意識の違いについて考えてきました。

そして、今回、まずは学んだことを少しでも実践してみようと、北欧がたりのメンバーが発起人となって「NO YOUTH NO JAPAN 参院選2019」という活動を始めました。

わたしたちが北欧で感じた日本との違い。
それは、若者の素質ではなく、分かりやすい情報やよく目にする素敵なパンフレットなど環境の違いでした。
ならば少しでも日本の若者を取り巻く環境を良くできないか?

試行錯誤ですが、オンラインで活動をしています。
良かったらご注目ください!よろしくお願いします。





今ね、国会議員の平均年齢って50歳くらいらしい。内閣でいえば、平均年齢63歳、最年少が52歳。 . 私たちが50歳になるとき、社会はどんな風になっているんだろう? 今より良くなってるといいなって思う。 . じゃあその「良くなってる社会」ってどんな社会? ちょっと政党とか候補者とか見てみて、私の生きたい社会をつくってくれそうなところに1票入れられるといいよね。 . だけど、投票に間違いはないから。 とにかく行って、「もっと先のこと考えて政治して!!!」ってメッセージ伝えませんか。 #どうして投票しないといけないの #NOYOUTH_NOJAPAN #GoVote0721 #わたしの生きたい社会を選ぼう #参院選2019 #選挙に行こう #投票へ行こう
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