わたしが生きたい社会ってどんなだろう?
そのヒントは、北欧にあるかもしれない。

わたしたちが北欧で見たこと、感じたこと、そして、語りたいこと。
大学生たちが現地よりお届けします。

現地レポート「エコビレッジ」で見た持続可能な暮らしとは

「エコビレッジ」という言葉をご存知でしょうか?

「エコビレッジ」とは、サステナビリティ(持続可能性)を考慮した「環境負荷の少ない工夫」を取り入れた暮らし方を実践する人たちが、村のように「お互いが支え合う仕組み」をつくりながら暮らすコミュニティです。



今日はデンマークに15ほどあるエコビレッジ の1つ、「フリーランド(FRILAND)」に行ってきたので、そのレポートをお送りします!


訪問の経緯「未来の留学生を支援するためのオークション

と、本題に入る前に、今日わたしがエコビレッジに行くことになった経緯を少し紹介します。
以前、学校でこんな張り紙があり、オークションが開かれました。
オークション出品募集の貼り出し
そのオークションとは、「未来の留学生を支援するためのオークション」
私のフォルケホイスコーレは、多様性を重要視し全校生徒の1割から2割程を、海外からの留学生として受け入れています。私もその一人なわけですが。

現在フォルケホイスコーレへの留学は、デンマーク政府の助成により、デンマーク人と同じ学費でできています。しかし、政府は財政圧迫による外国人排斥の流れで留学生の受け入れを制限する方向性に向かう模様。

さらに、留学生のうちのほとんど全員が、先進国からの留学生です。しかし学校は、より多様性を重要視するためアフリカや中東など多くの地域からの留学生を受け入れたいと考えています。
しかし、デンマーク政府からの補助金などは見込めない。

そこで、将来の留学生を支援するためのオークションが開かれることになりました。このオークションで集まったお金は、未来の留学生の学費の補助に充てられるそうです。
日本だったら募金になりそうなところを、それぞれができることを申告してオークション、なんともデンマークらしいなと思いました。

オークションの出品は、ダンス教室やマッサージ券など、多種多様。このオークション1回で10万円以上が集まったようです。

話が逸れましたが、今回のエコビレッジ訪問もこのオークションの一つ。
このエコビレッジに住んでいる先生が、招待するチケットを出品。9人限定、1人800円くらいのチケットです。

ということで、本題のエコビレッジレポートへ移ります!
先生のご自宅のお庭でアイスを食べながらお話を聞いている様子


エコビレッジ・FRILANDの紹介

エコビレッジは、デンマークに15ほどあると言いましたが、それぞれのエコビレッジで本当に色々と違うそうです。それぞれのエコビレッジでそれぞれのプリンシプル(掟)があったり設立の目的も違います。

ということで、エコビレッジ・FRILANDの話をしたいと思います!


FLILANDはユトランド半島、オーフスから車で40分ほど北東に行ったところにあります。設立は比較的新しい2002年。現在42家族120人が暮らしています。子どもが50人ほどということで若い世代が多い印象ですが、60代の子どもを持たないご夫婦や一人暮らしなど世帯構成は、多様です。
また、インターナショナルエコビレッジと掲げており、10以上の国籍が違う人が住んでいるなど、結婚などで外国出身の住民も多いようです。

このビレッジでは、年に6回、みんなで共同で働く日と会議の日があります。
それ以外は自発的にやりたい人がボランティアで畑やイベント、ごみ収集などの運営をやるというのがこのエコビレッジのスタイルです。

そしてゴミの分別について。食料などは家畜にいき、どうしても捨てなければならないものは13種類に分別されます。このゴミ箱は月に1回リサイクルや焼却場に自分たちで運んでいるそうで、ゴミ箱が大きくないのに、42世帯分のゴミが1ヶ月この大きさで足りることに驚きました。
ゴミ捨て場の様子

FLILANDの掟

①家のローンを組まない
これは、住宅ローンが人生の自由や選択を狭めるという考え方です。
住宅ローンを返すために働かなければならないのは本末転倒であるということを意味し、このエコビレッジに住む人は貯金して、またはお金をかけずに家をつくる必要があります。

入居者は土地を利用する権利を買うようですが、これを買うのも勿論一括で、ということでした。(そしてそんなに高くないらしいです。)

②一家庭一つ以上は農園(食物などを育てるガーデン)を持つ
この掟は、このエコビレッジを始めた際に、創設者が人が常にいるコミュニティにしたいと思ったことが始まりだそうです。ここに住んでいたとしても、平日毎日都市に働きに行ってしまっては住んでいる意味がないと考え、このエコビレッジ内で面倒をみなくてはならない何かを皆が持つことを原則としました。
どのようなお家にも畑などがありました
鳥やウサギを飼っているお家も多くありました

ただ、このプリンシプルは、誰かがチェックしている訳ではないので、あくまでも個人の良心で守るといったものらしいです。

FRILANDの設立の目的

このエコビレッジを始めた目的は二つ。

一つ目は、サステイナブルに生きる方法を模索するため。
このFRILANDの設立者は、2000年当時、「デンマーク人の生活のように世界中の人が消費し、生活をしていたらこの地球に資源が足りない。もし世界の人々が平等に資源を使うとしたら、今デンマーク人が生活している資源の20%で暮らさなければならない」と考えたそう。
そこで「デンマーク人の使っている20%の資源で生活の質を落とさずにどうやったら暮らせるか」ということを実験しようとエコビレッジを始めることにしたそうです。

数年前に私の学校の生徒が協力して作ったセカンドハンドルーム


普段は使わないものを共有するスペースも

2つ目の目的は、当時誰も使っていなかったストローベールという藁を圧縮した素材で家を建てること。この素材は断熱性に優れており、これによって家を建てることでサステナビリティを意識した建築ができると考えたためです。
ストローベールを使ったお家
どれが断熱性が高いかを実験するために、窓によって素材が違う
といっても、すべての家がこのストローベールを利用している訳ではありません。つかうかどうか、それもそれぞれの自由の様子。住む人が自力で建てている家もあれば、大工さんがつくった家もありました。この「家を建てる」ということにおいてもルールなどはなく、住民それぞれの意思が尊重されているようです。

いかにもハンドメイドなお家
ストローベールを利用しているお家
モダンなデザイン

すごく変な形のデザイン

「エコビレッジ」で感じた持続可能な暮らしのヒント

このFRILANDで一番よく聞いた「ソリューション(解決策)」という言葉。
このエコビレッジの目的にもあった通り、いかにこれまでの自分たちの生活の質を下げないでサステイナブルな生活をするか。自分たちの生活が持続可能でなければ元も子もない。
だから、モットーは、「安く、シンプルに、そして機能性を大切に。」
そして、何か難しいことが起きたり、快適さを諦めたくないところがあれば、それに対するソリューションを見つける。
エコビレッジには、たくさんのハンドメイドのおもしろい装置(ソリューション)がありました。
例えば、温かい湯船に浸かることを諦めたくないけど、毎日水を温めるエネルギーやその水がサステナビリティではないと考えた先生の旦那さんは、自宅にお湯を太陽の熱で保ちながら同じ水を浄化して4回まで使える装置を自作していました。
少しめんどくさいし、都心のような生活をしようと思えばできるけれど、そこに工夫を入れてみるというのがこの暮らしを楽しむポイントだと教えてくれました。
少ないエネルギーで暮らすようになって生活の質はもっと上がっているそうです。

ローンなしで家もあるし、自分の畑で食物を採る。また、ご近所同士のお裾分けもある。
普通に都市で暮らすよりも全然お金がかからないからこそ、家族の時間や趣味の時間を大切にできると先生は話していました。(確かに、この先生は学校に週に1日来る陶芸の先生です。ご主人も学校で働いていますが、全然見かけません。)

社会の全員がこのエコビレッジで暮らすことは現実的ではありません。
好き嫌いもあると思います。
だけど、自分の生活をちょっとエコにするための「ソリューション」を見つける心の余裕を持って生活できたら素敵だなと思います。

今日をまとめると、いつか自分の家を建てる時はこうしたいな〜とか妄想が膨らむ一日でした!



この記事を書いた人
能條 桃子 
慶應義塾大学経済学部休学中。
大学では井手英策研究会に所属し、財政社会学を学んでいる。
関心テーマは、若者の政治参加、多世代交流、リカレント教育、女性の社会進出や都市化と家族・地域のカタチなど。
NO YOUTH NO JAPANという団体をやっています。

わたしの記事一覧はこちら