欧州議会選挙が今月あります!
2019年5月23日から26日の間、5年に1度の欧州議会選挙が行われます。EU議会は705議席あり、それを各国の人口によって分配、それぞれの国で代表者を選出します。デンマークは5月26日が投票日で、14議席あります。1979年にEU市民による直接選挙が導入されて以来、9回目となる今回の選挙ですが、回数を重ねるごとに投票率が低くなってるようです。
Vores Europa(Our Europe)の出前授業
選挙の前ということもあり、先日、Our Europeという活動をしているPeter LaugesenさんとElena Maria Askløfさんが学校に来て1日講義をしてくれました。お二人は、ヨーロッパを数年旅してフィルムなどにまとめたり、ブログで発信、また、学校をまわることで、ヨーロッパ市民として若い世代の声を上げようという啓発活動を行なっています。Peter LaugesenさんとElena Maria Askløfさん |
ヨーロッパの若者たちが抱えている課題・直面している課題
Our Europeの1日講座では、午前中にEUという組織の話ではなく、ヨーロッパの若者が直面している状況という広いテーマで、フィルムなどを交えた講義が行われました。その後、チームに別れてその話をもとに自分はどう思うかという議論をしました。
今回の講義では以下の5つが紹介されました。
今回の講義では以下の5つが紹介されました。
- アイデンティティ
- 経済的な問題
- 多様性・人権(右派ポピュリズム)
- 気候変動
- 移民・難民
この5つの中で北欧の若者が抱えるアイデンティティの問題と南欧の若者が抱える経済的な問題を精神的なプレッシャーを対比して説明していました。この若者にかかるプレッシャーの話は、日本の若者とも共通するところがあると感じ、おもしろかったので今回はこの話を共有したいと思います。
若者にかかる精神的なプレッシャー
Youth under pressure - economy from Vores Europa on Vimeo.
↑講義中に見たフィルム。
↑講義中に見たフィルム。
南欧諸国の若者にとってのプレッシャー
ギリシャ・スペインなど南欧諸国では、失業率の高さなど経済不安定が若者に与える問題になっています。例えば、ギリシャでは2008年の不況により、失業率39%という状況です。
「悪い職業なんてない。働けるだけでありがたいと思わなければならない。」
自分の就きたい職業(医者や弁護士など)につくには、母国を離れなければならない。母国では医学部を卒業しても医者になれない。
このような状況で、若者の不満は溜まっているようです。
「選択肢がありすぎることが1番の問題。自分がどこにいるかわからない。」
「失敗するのが怖い。なぜならみんなが特別なことをしたいと思っているから。」
北欧諸国の若者にとってのプレッシャー
一方、北欧諸国では失業率は13%。しかし、発育障害(FTT)は増えており、4人に1人がストレスを抱えています。これは、現代の競争社会のプレッシャーによるものです。「選択肢がありすぎることが1番の問題。自分がどこにいるかわからない。」
「みんなが首相になれる訳ではない。みんなが世界を救える訳ではないし、多くがこういう野望を本心では持っているから大変だ。高い野望を持っている人ほどストレスを感じやすい社会だと思う。」
「選択肢がありすぎる」というのは今の日本の若者にも似た状況があるのではないでしょうか?
若者のストレスは個人の問題なのか?
南欧諸国の経済問題に巻き込まれて自由な選択をすることが難しい状況も、北欧諸国の恵まれすぎてて逆に自分のやりたいことが分からず苦しい状況も、個人の問題なのだろうか?
このフィルムでは、両者とも社会のシステムの問題であり、社会の問題であるという現地の若者の声で締め括られています。
多くの人が苦しむ状況だからこそ、社会の構造から今の状況を変える必要があるという観点は重要だなと思いました。常々、自己責任論に転嫁しそうになりますが、そうではなく、社会の問題として扱うということですね。
北欧の若者と南欧の若者、どちらが自由なのか?
南欧諸国と北欧諸国の若者、どちらが自由なのか?という議論を最後にしました。自由な社会でどうして私たちは不自由になるのか
今の若者は、どの時代の若者よりも自由なのではないか。戦争などもなく、安全で快適な生活がある。
だけどどこかで不安が付き纏い、苦しくなる時がある。
日本の若者へのプレッシャーはどのようなものか?
日本では、まず、「受験」というシステムがストレスを生んでいると思います。
私も、高校受験、大学受験としてきましたが、偏差値という一つの軸で評価する社会では、自分の価値を感じるのが難しくなります。
受験が終わって、大学に行ったら就職活動。
最近は売り手市場ではありますが、画一的な服や鞄、髪型でユニークさをアピールするという矛盾。
北欧の若者と日本の若者、目立ってはだめだけれど、特別にならなければならないという目に見えないプレッシャーは似ているような気がしました。
自由に選択できる分、何をやるかもその人次第。
だからこそ、自分のやりたいことがないと苦しい。
ただ、北欧と違うなと思ったのは、日本は22歳になったら(大学卒業したら)すぐに就職という社会のプレッシャーがあるということ。高校卒業後、大学進学までのギャップイヤー4年とか日本だと受け入れられずらい。だけど、デンマークにはそういう人がたくさんいる。
日本の急かされるプレッシャー
北欧のやりたいことを見つけないと次に進めないプレッシャー
どっちが幸せなんでしょうか?
今の私にはまだ分かりません。
だけど、デンマークに来て、社会システムが全然違う社会で育つデンマーク人と過ごしていると、社会システムが個人に与える大きさを実感します。
今まで私が常識だと思っていたことは、ただの日本の社会システムによる結果でしかなくて、変化しうるもの、人間がつくってきたシステムであるということに気づきます。
だからこそより良いシステムに変えられる可能性があるし、そのために若者も声を上げる必要がある。これはヨーロッパも日本も同じだなと。
今回、わたしはOurEuropeの講義を受けて、EU市民でもないのにすごくEU議会に興味を持ちました。こんな講義はすごく素敵だなと思うし、日本も「知る機会」があればもっと社会や政治に興味を持つ人って増えるのかなと思いました。
この記事を書いた人
能條 桃子 Follow @momokonojo
慶應義塾大学経済学部休学中。
大学では井手英策研究会に所属し、財政社会学を学んでいる。
関心テーマは、若者の政治参加、多世代交流、リカレント教育、女性の社会進出や都市化と家族・地域のカタチなど。
NO YOUTH NO JAPANという団体をやっています。
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